人知れず戦い続けているサルスの孤独は誰も知らない。

そしてその戦いがこの先も続いていく事を、サルス以外の誰も知らないのだ。





「カルサ、このままじゃヤバイぞ。」

サルスと別れた後、ナルの事を告げる為にカルサと貴未は老大臣ハワードを探して城内を歩いていた。

武器庫の言い争いから今まで沈黙を守っていた貴未の第一声にカルサは足を止める。それは貴未の声があまりにも低く、緊急性を含んでいたからだった。

「お前一人が悪役になって事が済むならいい。でも今回は理解者が必要だ。」

後ろを歩いていた貴未はカルサと向かい合う位置に移動し、今度は彼の目をしっかりと捕らえて口を開いた。

「全部じゃなくてもいいからさ。サルスには話した方がいいんじゃないか?」

カルサは視線を決して逸らさない。しかし何も答えないまま静かに時が過ぎていく。

睨み合いの様な状態が続き、先にしびれを切らしたのはいつもの様に貴未の方だった。

「カルサ。」

促すように貴未が彼の名を呼ぶ。怒っているようではないと顔を見ればすぐに分かった。

「何かあったのか?言えよ、同盟違反だろ?」

それはまるで友達だろうと言っているようにカルサには聞こえ、途端にむず痒くなる。貴未の優しさがカルサの心を揺らし、そして瞳も揺らしながら緩やかに視線を逸らした。

そうした変化に気付いた貴未は話を聞く方向に切り替えて待つことにする。

「貴未。」

暫くして丁寧に彼の名を呼ぶカルサの声が聞こえてきた。

「なに?」

「この国を潰してしまおうか。」

貴未の目が大きく開いた。