「陛下!?」

誰か一人の声をきっかけに全員がカルサに注目し、すぐに作業を止めて跪いて頭を下げた。

「構わない、続けてくれ。」

「陛下のご意向です。皆さん作業を続けてください。」

横に控えていたエプレットが前に出て声を張り上げる。その声をきっかけにまた全員が作業に取り掛かり始めた。

「これで最後か?」

「はい。怪我人以外は明日にでも出発します。」

「そうか。エプレット、お前はもう下がれ。救護室で休んでこい。」

カルサの突然の命にうまく反応することが出来なかった。カルサは振り返り目で訴える。それが何を伝えているか分からないはずが無い。何故その言葉を言われたか、エプレット本人が一番良く理解していた。

光玉を使い疲れ果てたエプレットの体力がこんなに早く戻っている訳ない。二日、下手すれば三日は本調子にならない筈を気力で何とかしているのだろう。それをカルサに見抜かれていていたのだ。

実際に同じく光玉を使ったタルッシュは床から起き上がることさえままならない。

「はい。ありがとうございます。」

ここで無茶をしても意味がないことは分かっていた。どうしても気になった為に無理矢理にでも動いたが、もう目的も達成されたので満足はしている。

カルサが無事であると、もう一度確認したかったのだ。

エプレットの答えに頷きながらカルサは部屋の中を見回した。そんなに広くはない部屋に何百人という国民が避難していたのだ。さぞかし窮屈だっただろう、無理をさせてしまった事にカルサは悔やんでしまった。

もっと考えなければ、こんな状態では実行できない。どこかに改善点はないかカルサはゆっくり時間をかけて部屋の中を見回した。

高くとられた天井は見上げると頭が肩に付くくらいだ。天井の細部まで装飾が施されているのが分かる。

「上に何かあんの?」

さりげなく横に貴未が付いた。カルサは態勢を元に戻し不思議そうな顔で貴未を見つめる。

どうしてここに貴未がいるのかと。