そしてその頃、シードゥルサでは珍しく聖が声を荒げていた。
「ヒの国に行った?あのキーマンも連れてか?」
カルサの執務室、聖はやっと捕まえた部屋の主を前にして驚きの声を上げた。
今聞かされた事にその場にいたサルス、紅も同様に驚いている。
「そうだ。」
「おらんとは思てたけど…まさか、なあ…聖。」
紅の問い掛けに聖は動揺して反応は見せなかった。
ヒの国は二人の故郷であり、そこにいま貴未たちはいる。
複雑な表情を浮かべる胸中は誰にも分からなかったが、聖にとっては大きな衝撃であった事は十分に伝わった。
「何しに…貴未は何しに行ってんねや?」
ようやく出た聖の声に答えるのはカルサしかいない。
カルサはいつもと同じように冷静さを保ちながら淡々と答えた。
「調査だ。」
「調査て何の?」
決して口調が強い訳ではないが、まるで問いつめるように聖の声がカルサに向けられた。