完全に身体だけとなったナルを見つめ、そっと肩に触れる。身を屈めてナルに触れた手の上に額をつけた。それはまるで忠誠の様だと感じる者もいただろう。

「ありがとう、ナル。」

何度繰り返しても足りないくらいだった。ありがとう、ありがとう、心の中でずっと繰り返していく。

カルサは顔を上げて後ろを振り返った。今残る仲間はこれだけだ、時間がない、やらなければいけない事がある。

「これ以上、犠牲者は増やしたくない。」

カルサの言葉に身が引き締まった。お互いに感じているからだろう、彼の心痛が伝わってくるようだ。だからこそカルサの思いに同意して強く皆が頷いた。

「ヴィアルアイの許へ行くぞ。」

緊張感が一気に増す。カルサは立ち上がり祭壇から降りてラファルの所へ歩いていった。ラファルは座ったままカルサを迎える。

「少しでも多くの力が欲しい。ラファル、一緒に来てくれないか?」

ラファルは数回尻尾を振って立ち上がった。それは肯定の印だと分かり、ありがとうとラファルの背中をゆっくり撫でる。そして祭壇の方へと身体を向き直した。

「判断は任せる。力を貸してくれるなら。」

「まずはサルスんとこだろ?」

カルサの言葉を遮って貴未が叫んだ。

「でもそれは皇子の仕事。私たちには別の仕事があるわ。」

「準備は進めておきます。」

瑛琳に続き千羅が答えた。もしもの事があっても大丈夫なように、そう続けて言った千羅の言葉に微笑んだ。頼もしい仲間がいることに喜びを感じる。

「助かる。」

心の底から思う言葉だった。それは真っすぐに三人に伝わったであろう、彼らにも自然と笑みがこぼれていた。

「マチェリラ、俺は永を取り戻す為にカルサと一緒に行く。どうする?」

「行くわ。今からは自分の為に。」

貴未の微笑みにマチェリラは同じように返して視線をカルサに向ける。そこにはさっきまでの優しい笑みはなく、まるで挑むような視線にカルサも目を細めた。