「思ったより通じてよかったわ。まさか直接話せるなんてね。」

圭の登場はさすがのナルも予想していなかった事らしく、改めてカルサたちの行動力に感心していた。ナルの視線に圭は答えて穏やかに微笑む。

そんな温かな空気が流れた時、もう全員が最後を覚悟した。彼女の幕は下ろされようとしている。

「ナル。」

最初に名を呼んだのはカルサ。続いて貴未、千羅、瑛琳、レプリカと別れを惜しむように次々にナルの名を呼び、彼女もまたそれに微笑む事で答えていく。

可愛い子たち、本当はずっと傍にいて守ってあげたかった。でも運命の歯車がそれを許さなかった。それもまた自分が選んだ道、その結果なのだから重んじて受けよう。

それが自然の摂理。それがナルの覚悟。

やがてナルの身体がぼんやりと光り始め、彼女の姿もぼやけてきた。

「カルサ、この国を頼みます。」

ナルの言葉に素早く答えられずにカルサは身構える。もちろんカルサが何かを思い動いている事は知っていた、いま口をつむぐ気持ちもナルには全て分かっていた。それでもカルサはちゃんとナルの目を見て答えようとする。

「役割はちゃんと果たす。」

明確な答えは示さなかった、そしてどんな形であれという続きがあるように思わせる言葉にカルサらしい答えだと愛しさがこみあげて笑ってしまう。

「国王としての責任ね。」

「勿論だ。」

その返事は早かった。

幼い頃からずっと傍で見てきた小さな王は今ではすっかり大きく成長して立派になっている。嬉しさと淋しさと、誇らしい気持ちがナルの全身を駆け抜けた。

カルサは本当に逞しくなった。

「国王陛下。」

そう言うとナルはお辞儀をしてみせる。

「長い間、お世話になりました。」