「前々からリュナと聖には目を光らせるように瑛琳と千羅に頼んでいたんだ。」

「それで良かったと思うわ。」

やはり自分たちを見張っていた、その事実をレプリカは静かに受けとめた。カルサの立場を考えれば当たり前なのだろう。レプリカは一度落とした視線をカルサを見上げる形で起こした。彼の視線は未だ、手元にある手紙から動かない。

「俺は一番見なければいけないものを長い間見落としていたのか。」

落胆、それよりも今までの自分を咎めているように見えた。それは後向きではない姿勢なだけに気になるところも多い。

「私も気が付かなかった。というよりも、気付ける筈がなかった。」

カルサの視線が手元からナルに移る。含みのある言い方はこれから来る波を予感させるものだった。

「どういう意味だ?」

「それが私の死に関わる事だから。」

カルサの目が大きく開く、強くしかし密やかに響く声に全てが揺らぎそうになった。だって今の言葉はまるで信じる事が出来ない事実を言われるような気がしたのだ。

占者は自分の能力に応じて様々な未来や過去、世界を見ることが出来る。しかしどんなに強い力を持つ占者でも自分の生死に関わる出来事は見れないと言われていた。それ以外にも占者の力以上の相手は見る事が困難であるとか、見る相手が魔法に対して強く拒むことが出来たりすると見えないとも言われている。

しかしナルはそれらの可能性を出さずに一つの理由をカルサに渡した。それは事実を意味しているのだ。

「サルスが、ナルを殺したのか?」

カルサの言葉は風のようにその場を吹き抜け小さなざわめきが起こる。内に秘めておけない程の戸惑いが声に表情にと出てしまう。誰もが不安を抱えながらもナルに答えを望んだ。

「いいえ。私を殺したのはロワーヌ。でもそれは私から仕掛けてしまった戦いの結果よ。」

直接的な関わりは無いと言うがではどうしてサルスがナルの死に関わるのかが見えてこなかった。カルサは目を細めその奥にある真実を探ろうと手を伸ばす。

「この戦い自体が…サルスに関わりがあるということか?」

「そうね。少なくとも…レプリカ、貴女なら知っている筈。」

そう言いながら視線を向けられたレプリカの身体は大きく揺れた。