「育てられたと、確信を持って話されている辺りが気になります。まるで実の両親ではないと言われているような気がしました。…それはリュナ様も感じていたようです。」

レプリカの言葉にカルサも頷く。沙更陣の言葉は腑に落ちない事があるのは確かだ、両親ではなく育ての親がいるのだとそう容易く分かるものだろうか。

古の民の子孫、生まれ変わり、その者たちの一部が特殊能力を持ち、さらに一部が御劔としてオフカルスに戻る。その数は少ないとは言えない筈だ、一人一人気にし始めたら限りがないだろうとも思うのだが。

「風神だから気にしていた。そう言われたら話が終わってしまうな。五大皇力を持つ者は特別だ。」

「しかし、万に一つの可能性はありますね。」

カルサに付け足すように千羅が発言した。レプリカが気にするのも分からなくはない、しかし裏を知っているからこそ気になっているだけの所も少なからずあるだろう。その可能性は否定できないのだ。

「沙更陣に直接聞く。どちらにせよオフカルスには行かなければいけない。」

顔を上げ二人と目を合わせると千羅もレプリカも頷く。しかし、レプリカの表情は歪み再びカルサに頭を下げた。

「陛下、自分勝手と分かってお願い申し上げます。」

頭は下げたまま言葉を続ける。レプリカはカルサの合図を待っていた。

「何だ?」

「リュナ様をお守り下さい。もしここがリュナ様の帰るべき場所になるのであれば、連れ戻してほしいのです。」

レプリカはカルサに対し頭をあげる事無くさらに話し続ける。声に力があった。それは強い気持ちの表れ、レプリカの強く主人を思う気持ちが全面に出ていた。

「リュナを取り返してこいと。」

「はい。」

肯定の返事で身体が揺れる。カルサにはレプリカが何を求めて何をやろうとしているか分かってしまった。

「リュナの居場所を作る為に、また自分の存在を消すのか。本当は自分が傍に行きたい筈だろう?」

カルサの言葉にレプリカの身体が無意識に反応する。カルサの表情が歪み、それは声の表情となりレプリカにも伝わっていた。

「何がそこまでさせるんだ?」

カルサは椅子から離れ片膝をついてレプリカの前に座った。つまりはレプリカの前に跪いた形になる、頭を下げたままのレプリカにもそれは分かり緊張が走った。

カルサの両手はレプリカの両腕をとらえてゆっくりと顔を上げるように促す。抵抗する事無く促されるままにレプリカは顔を上げていく。目の前には寂しげな表情を浮かべたカルサが真っすぐに見ていた。