「リュナ様の力が強くなったのは、本来の状態を得たからなのでしょうか。」

それはカルサの言葉を受け入れた上での言葉だった。

「そうかもしれないな。」

頭に浮かんだのはロワーヌと戦っているリュナの姿。確かにあの時の彼女は強く、戦士の名に相応しい程の戦い方だった。

今までの彼女は環明よりも力が弱く戦士と呼ぶには難しい印象が強かったのが正直なところだ。どちらかと言えば攻撃よりも癒しの力の方が優れていたような気がする。環明の力がリュナに合わなかったのかもしれないと思う程だった。

特殊部隊ではその力を思う存分に発揮していたと聞いていたし、突然その実力を惜しみなく披露し始めたとも聞く。それこそ封縛から戻った後のことで周りから見れば休養期間を取り戻すかのような頑張りだと思われただろう。

しかしそれこそが本来の状態を得たということだったのだ。

「でしたら、ウレイ様が父親ということに疑問を持ちます。お二人ともに魔性の血は含まれていませんから。」

リュナの出生について長年疑問を持ち続けていたのであろう。レプリカは信じられないと拒否するのではなく、カルサの言葉を素直に受け入れた。それ程までに彼女の中でもリュナにまつわることは謎が多かったということなのだと感じさせる。

「セリナ様の過去は何も探るつもりはありませんでした。全てを捨て、新しくリュナ様として生きていく妨げにはしたくありません。」

少なくとも今まではそうだった。どれだけ気になったとしてもセリナを封印しリュナとして生きるには関係がない事だ、しかし今はそうも言っていられない。

「これからはリュナ様を守る為にも、全てを知る必要があります。」

レプリカの目はまっすぐカルサに向けられた。それは決意を秘めた眼差しだ。

「皇子、沙更陣様にお会い下さい。」

唐突な提案、しかも予期せぬ人物にカルサは目を細めた。あれから何かとあってオフカルスには足を踏み入れていない。実のところで言えば彼らがどうなっているかも全く分からない状況なのだ。それでも強引にでも行こうという気持ちがわかなかったことについてはカルサ自身であえて蓋をしている。

「何故、沙更陣なんだ?」

「沙更陣様がリュナ様におっしゃった言葉が気になります。」

カルサは疑問符を表情にした。