「レプリカ。」

「申し訳ありません。ですが…やはりお辛いのではないかと。」

必死に涙を堪えながらレプリカは訴える。カルサは微笑む事でそれに答え、横目で千羅を確認するとまた微笑んで苦笑いをした。

「ああ、全部辛い。」

ふざけて出た言葉が本気かどうかは分からない。それでも彼をまとう空気が変わった。

「そうですね。そりゃそうだ!」

合わせるように千羅が笑う、つられてレプリカにも笑みが戻った。しかし穏やかな空間は長くは続かずに、レプリカの涙も乾かないうちに話はまた戻ってしまう。戻したのは他ならぬカルサ自身だったが、彼にはまだ聞いておきたい、伝えなくてはいけない事がるのだ。

「レプリカ、もう一つ聞きたい事がある。」

急な言葉にレプリカは正しく反応する事が出来なかった。カルサは誰よりも早く真剣な表情に変わり、残された千羅とレプリカを一気に自分の方へ引き戻す。

「リュナが魔性の血を持っている事は知っているか?」

核心に触れたカルサに千羅は目を細めた。

レプリカは大きく目を開くと震える手で口を覆い、信じられないと表情でカルサに訴える。

「いいえ。」

否定の声を出しながらも目が真実をカルサに求めていた。自然と前傾姿勢になり、その言葉の先を求める。

「本当ですか?」

長年共に過ごしてきてそんな様子は少しも見られなかった。光の中で生き、他の人間となんら変わりなく過ごしてきたのだ。ただ信じられない気持ちでいっぱいだった。

「だって、今まで。」

「一度封縛された時、遺伝子が目覚めたのかもしれない。それ以降リュナの体調がおかしくなった。」

レプリカの言葉を遮りカルサは可能性を告げる。

それが大きく響いたのであろう。レプリカの中にも思い当たる節がいくつか見つかり、苦々しい表情を浮かべた。確かに彼女は光が溢れる天気では体調を崩し、曇りの日は反対に調子を戻していたのだ。