突然の行いに目を大きくして驚くもレプリカは身動き一つしようとせずに受け入れる。それが何を意味するのか分かったのだ。

「リュナにも見せたことはない。」

その瞬間レプリカの中に流れてくる大量の記憶。あまりの量、あまりの感情の動き、深い悲しみの中にある少しの喜びに触れてレプリカは身体を後ろに振った。いや、受け止めきれずに倒れそうになったと言った方が正しい。

とっさに支えた腕に体重を乗せながら、それでも終わらない記憶の流れに耐え続ける。

それはカルサが生きてきた年月の全てだった。

カルサトルナスとしての記憶とカルサ・トルナスとしての記憶。

そしてリュナにも見せたことがないと言うカルサの気持ちは全てを見終わった時に初めて分かった。

「レプリカ!」

支えていた腕の力が抜けて崩れていく彼女の身体を千羅が支える。レプリカの隣に座って彼女の身体を支えながら起こしてやった。

そう言えば彼女はまだ身体の傷が癒えたばかりだったのだと、体力が戻っていないのに無理させたことをカルサは後悔する。しかしレプリカは意外にも優しく微笑んでカルサを見上げた。

「…リュナ様に、お伝えしたいです。」

その言葉にカルサは目を大きくする。

「…どんな記憶だったのですか?」

「ふふ。告白の様なものでしたが、…あとは秘密です。」

優しく尋ねた千羅の声にレプリカもまた嬉しそうに微笑んで答えを濁した。

「好きだとわめいていましたか。」

「千羅。」

「ちょっと私にも見せて下さいよ、皇子。」

「断る。」

茶化す方向に矢印を向けた千羅をすかさずカルサは止めに入る。その様子をレプリカはただ微笑みながら見つめた。しかしやがてその表情は曇っていく。

堪え切れなかった感情は再び彼女に涙をもたらした。