あれだけ得ようと焦っていた情報がすぐ目の前から下りてきた。カルサは嬉しいよりも、衝撃よりも、焦りよりも、むしろ無心に近い状態で少しずつ糸を引き寄せていく。

欲だけで動いていた。

「リュナの両親は誰だ?」

真に迫る事に躊躇いはない、これ以上何がどうあっても己の信念を突き通すことを決めていたのだ。決して上からではない、ただ教えてほしいという願いが彼を前傾姿勢にさせる。

レプリカは目線を外す程度に頭を下げて口を開いた。

「環明様にございます。」

「父親は?」

反射的に立ち上がったカルサを感じながらもレプリカは首を横に振る。これは以前と同じ光景だ、リュナの前で両親のことを尋ねた時と全く同じ様子に言い様のない脱力感に襲われた。

真実を求めたカルサの声が微かに震えているが、声を発せずには居られないようだ。記憶を巡らせながら手で口元を覆う。

「ウレイか。」

呟いたのは自分だった。なのに自分の発した言葉に衝撃を受け、強く鼓動が体中に響く。まるで自分の中に誰かがいるようにも感じた。

強い鼓動は痛みさえ覚えるほどのもの。もし本当にリュナが環明の娘だったのなら、しかしそれが事実なのだろう。信じがたい真実はカルサの胸に深く突き刺さる。

受け入れようと目を閉じ、静かに深呼吸をした。

「父親がウレイ様かどうかは分かりません。あやふやな記憶をアバサに助けてもらっているところもあるのです。」

「どういう事だ?」

レプリカは頭を上げると少し難しい顔をして言葉を続ける。

「私はまだ幼かったものですから。」

それが何を意味しているのかカルサには分からなかった。しかしレプリカの様子から感じ取れるものがある。