「エプレット、タルッシュ。二人のおかげで沢山の命が救われた。光玉を本当に使えるとは恐れ入ったな。」

「滅相もない。」

「お世辞でもなんでもない。本心からだ、感謝の言葉しか思いつかない。」

カルサの言葉一つ貰えるだけでエプレットは自分の心が癒され身体も微かに軽くなったような気がして照れ笑いをした。病は気からというがなんと現金な作りだろうかと恥ずかしくもなる。

「失礼します、陛下。少し確認していただきたい事が。」

「分かった。」

後方から呼ぶ声がして振り返ると兵士は軽く頭を下げたままカルサに申し出ていた。カルサはタルッシュとエプレットを千羅に任せてその場から動く。

「失礼ながら、リュナ様付の女官であるレプリカがどうしても陛下にお伝えしたいことがあると申しておりまして。如何致しましょうか。」

兵士の視線の先は部屋の奥の一角に向かっている事に気付いた。

「構わない。案内してくれ。」

きっと光玉の力なのだろう、今まで瀕死の状態であった彼女も目覚めたのだと静かに理解をした。カルサの姿を確認するとレプリカを囲んでいた女官たちは道を開けて頭を下げる。

一番最初に見たのは放心状態なのか、まっすぐに天井を見上げたまま横たわっていたレプリカだった。

「陛下がいらっしゃいましたよ。」

女官が彼女の耳元で優しく囁く、その声に反応して彼女はゆっくりと顔を動かした。次第に待ちわびた人物が視界に入ってくる。

「陛下。」

カルサは頷くことでレプリカの答えた。

「すまない、席を外してくれ。」

周りにいた女官や兵士たちはカルサに一礼をして各々別の場所へと去っていく。二人は気配でそれを感じ取り、少しの沈黙の後に最初に口を開いたのはカルサだった。

「調子はどうだ?」

「問題はありません。」

体力がないのだろう、声に力もなく目を瞑っている事の方が多かった。それでも顔はカルサの方を向いたまま彼女は微笑む。