「後は頼む。」

兵士たちが敬礼したのを確認するとカルサはその場から離れた。今にも崩れ落ちそうな気持ちを必死に支えているのが千羅には痛い程よく分かる。

それでもカルサはまだやらなければならない事がある為、ここからすぐには動けなかった。真相を知るべく近くにいた兵士に声をかける。

「ここで一体何があった?」

部屋を取り巻く光の煙は自分の力の気配がする、それが気になって仕方がないのだ。

「エプレットさんが急に…。」

「エプレット?どこだ?」

兵士の言葉を遮りカルサは問いかけた。兵士は辺りを見回して目的の人物を探す、うっすらと残る記憶を頼りに、覚えのある方向を注意深く眺めた。

「あ、あちらです!入り口付近に座っています。」

短く礼を言うとカルサは兵士の指し示した方向を目がけて歩き始める。自然と増す速度が彼の気持ちを表していた。近付くにつれてエプレットの顔色の悪さに気付かされ、彼の状態に不安がよぎった。壁に背中を預けて具合が悪そうにしている、カルサはエプレットのすぐ傍に片膝を付いて屈んだ。

「陛下!?」

エプレットの様子を診る為に傍にいた兵士が声をあげた。思わぬ人物に驚きを隠せなかったらしい、その声に今まで目を閉じていたエプレットもうっすらと目を開けた。

「エプレット。」

少し前屈みになって名を呼ぶ。エプレットの視界に大きくカルサが入っていた。

「陛下。」

目を大きく開き、無理矢理その重たい身体を起こそうとするのをカルサは手を差し出して止めた。小さく首を横に振る、その姿を見てエプレットは再び背中を壁に預けた。そして彼の隣に同じ様にして座らされている人物に目を向ける。

「…タルッシュか?」

エプレットとは異なりタルッシュは何の反応も見せなかった。不安に思ったカルサが彼に手を伸ばそうとした時にエプレットが声をかける。