擦れた声で懸命にナータックが言葉を綴った。あの時が前回の襲撃のことを指すのだと理解するのに少し時間がかかってしまったのは仕方がない、ナータックの中ではあの時が一番新しい出来事なのだ。おそらくナータックはヴィアルアイと対峙した時の話をしているのだろう、カルサは頷くことで相づちを打った。

「しかし侵入者は、こう返してきました。」



-それは我が子の名だ。

-ここは光を操る戦士、ウレイの城だろう。



カルサの思考が止まった。

大きく開かれた金色の瞳は小刻みに震え動揺を隠しきれていない。

「陛下、貴方は人違いをされている。お逃げ下さい。」

心の乱れからカルサは手に力が入らなくなっていた。ナータックの声に反応して頷いてはいるが目が泳いでしまう。ナータックがカルサの手を強く握り、少し自分の方に引き寄せたことで自分の思考の中に入り込まずに戻ってこれた。

「あの侵入者は、ウレイが持つ物全てを奪うと言ってました。きっと容赦なく陛下を狙います。この騒動は貴方様のせいではありません。決してご自分の存在を責めてはいけない。」

ナータックの強い眼差しが一心にカルサに向けられる。

「違う。絶対に貴方のせいではありません。」

擦れた声なのに彼の言葉には力があった。

強い想いはカルサを掴んで離さない。ナータックが意識を失う間際まで繰り返していた言葉にそんな意味が隠されていたなんて誰が予想できただろう、カルサは強く手を握りナータックに声をかけた。今は自分の動揺など後回しだ。

「分かった。ありがとう。よくやってくれた、ナータック。」

カルサの微笑みがナータックの気持ちを楽にさせる。力が入るあまり少し浮かしていた身体はゆっくりとベッドの上に沈んでいった。

「また後で見舞いにくる。今はゆっくり休んでくれ。」

肯定の言葉を呟くと気力を使い果たしたナータックは静かに目を閉じる。握っていた彼の手をゆっくりとベッドの上に置き、カルサは身体を起こして周りに控えていたナータックの部下たちに声をかけた。