千羅は手紙を開き、瑛琳も横に並び二人で読み始める。そんな二人の姿にこの手紙の新しさを貴未は認識する。しかしそんな事を頭の端で理解していても、心中はまだ穏やかでは決してなかった。

カルサは貴未と向き合い重い口を開く。

「こちらの報告を簡単に言うと、ナルが死んだ。」

何かを求めるように貴未は顔を少し上げた。それに構わずカルサは言葉を続ける。

「リュナがいなくなった。レプリカが重傷を負った。」

貴未の目が大きく開く、それでも言葉を挟まないのはカルサの様子がおかしかったからだろう。少し潤んだ瞳で食い縛るように口元に力が入っている。カルサは大きく肩を揺らし深呼吸をした。

「あいつらが現れた。」

あいつら、それだけで誰の事を指しているのか分かる。

貴未は思わず息を飲んだ。

十中八九そうだろうと分かっていたが、それでも顔つきは厳しくなった。これであれだけの魔物を動かしこの城に攻め入った人物は確定した。

「詳しくは後で聞くよ。こっちからは聖の事だ。」

貴未の出した言葉に一同の視線が集中した。代表して疑問符を口にしたのはカルサだ。

「紅も聖も行方不明のままだ。聖がどうかしたのか?」

貴未はゆっくりと視線を落とし、そしてナルの方を見た。次にカルサに視線を戻す。

「話が長くなりそうだし、とりあえず座ろう。」

貴未はそう言うと階段まで歩き、最上段に腰掛けた。

カルサも横に座り、千羅は途中の段に瑛琳とマチェリラに座るように薦めると一番下にあぐらをかいて座った。数段しかない階段だが、距離を感じた貴未は少し下りてマチェリラとの距離を縮める。

二人は顔を合わせて微笑んだ。

カルサもまたそれに続き、全員が近寄ったことで絆を感じた一同は自然と微笑んだ。