「カルサの所にいこう。多分それが一番早い。」

「あの子なら大聖堂にいるはずよ。」

ありがとう、そう答えて貴未は宙に手を差し伸べた。やわらかく暖かいものが手に触れた瞬間、二人は大聖堂に飛んだ。


手紙を元のように折りたたみ、カルサは懐にそれをしまう。送り主はもう答えてはくれない、カルサはただ彼女を見ているしかなかった。

まるで寄り添うように光の精霊・桂がカルサの肩にとまる。自然とお互いが擦り寄った。

「カルサ。」

祭壇の下から声がかかりカルサは勢いよく立ち上がった。声の主が誰かなんて考えなくてもすぐに分かる。

「貴未!」

貴未の姿を見るとすぐに階段を駈け下り、そのままの勢いでカルサは貴未を抱きしめた。滅多になり出来事に驚き貴未の両手は宙を彷徨う。

「おおっ?」

「すまない!無事で良かった!」

声にならない声でカルサは貴未に投げかける。そこで初めて自分に巻き付く腕が小刻みに震えていることに気が付いた。

たまたま近くにいたのがサルスだったというだけで報告して飛び出したが、やはりカルサにも声をかけるべきだったのだろうか。いや、あの時の自分の判断に間違いはないと自信を持って言える。

心配してくれていたのだと、カルサの気持ちが伝わって自然と笑みが零れた。

「悪い、勝手に動いて。カルサ…なんとか無事で良かったよ。」

二人はゆっくりと身体を離してお互いの姿をよく確認する。平気なふりならいくらでもできる、でも立って歩ける状態であることは分かった。それだけでも上出来だろう。

「外を見てきた。それに話したい事があるんだ、千羅と瑛琳を呼んでくれない?」

カルサは頷く。

「話なら…沢山ある。」

歯切れの悪い様子に貴未は初めてカルサから視野を広げた。さっきまでカルサがいた祭壇の上に誰かが横になっている。