「光が守ってくれたらしい。」

「光?」

「村の人が言うには…聖の力なんだって。」

曇った表情のまま貴未はサルスに答えた。自然と二人は向き合い、何かが通じたようにサルスは首を横に振った。

「聖の行方は分からないままだ。」

顔にも声にも出さなかったが、視線を落としたことによって気持ちを表している。無事でいてくれと、願うことはもう無意味なのだろうか。

聖の姿を見たのは民の部屋に結界を貼った時、それが最後だった。紅はナルと共に姿を消したきり二人の行方も分からないままだ。

どうか無事でいてほしい、そう思い続けるのにも限界がある。気持ちが不安に犯され始めていた。

「城の壁も応急処置だけで今は治療を優先させている。貴未も一度ゆっくり休んでくれ。」

「ああ、王様に報告したらそうするよ。」

サルスに手を振り、貴未はおそらくカルサがいるであろう謁見室に向かった。奥に向かうにつれて人の気配は薄れ、次第に誰もいなくなる。

「マチェリラ、いる?」

「おかえり、貴未。」

姿は見せずに声だけでマチェリラは貴未に答えた。先日の襲撃の中、彼女も貴未と共に戦ったがその姿をさらさずにいたようだ。遠くから人知れず援護をするという形で彼女なりの戦い方をしたらしい。

まだサルスはおろかリュナにさえ彼女の存在は知られていない、秘密の戦力だ。

「無事だった?怪我はない?」

「大丈夫、さすがに疲れてるけどね。マチェリラは?」

「心配いらないわ。それより外の様子はどう?もう魔物の気配は感じないけど。」

うん、そう呟くと貴未は黙り込んでしまった。マチェリラは静かに彼の言葉を待つ。