「おかえり、貴未。少し休もうと思ってたんだ。付き合わないか?」

微笑むサルスに頷くと貴未はサルスの後に続いては歩きだし、人混みを背にしながら話を始めた。

「外の状況はどうだった?」

「まだ全部は回れていないけど、だいたいは終わった。」

「…そうか。」

自分から切り出した話ながら、サルスは貴未の服装がボロボロな事に初めて気付いた。誰からの命令が出るわけでもなく、貴未は真っ先に部隊を編成し出発できる状態が整った後でサルスに出動の報告にきたのだ。

それにはサルスもカルサも深く感謝している。その報告をした時のカルサの表情は何とも言えないものだった。少しでも触れれば壊れてしまいそうな、今にも泣きだしそうな顔をしていたのだ。

「引き続き行ってくるよ。」

「ありがとう。」

それだけで良かった。その言葉だけでサルスの気持ちは貴未に伝わる。貴未は微笑む事で伝わったことを告げた。別にカルサやサルスの為にとった行動ではない。自分の本能に従い、為すべき事をした迄の事だった。

それよりも貴未には気になる事がある。

「城の方はどうだ?」

貴未の問いにサルスの表情が曇った。

「被害者が、多く出てしまった。」

サルスの足が止まったことに合わせて貴未も足を止める。今の救護室は怪我人で溢れ、重傷患者と軽傷患者の部屋を分けたとサルスは続けた。重傷患者の部屋は常に緊迫した空気が流れているとも続けられる。

「外は、思ったより被害が少なかった。敵側の目的が城に集中していた、っていうのが大きな理由だろうけど。」

貴未の言葉にサルスは驚いた。戦力がある城で強いダメージを受けているのだ、外はもっとひどい状況だと予測していたのに思っていた状況とは違う。

「何だ?」

しかし歯切れの悪い話し方にサルスは真実を求めた。それをきっかけに貴未は話を続ける。