手伝いたい気持ちはあるがもう身体は動かない、それに自分にもやらなくてはいけない仕事がある。

帰還したばかりの兵士たちは周りの景色に圧倒されながらも中を歩いていった。そんな彼らに気が付いたのは女官長フレイクだ。

「貴未!」

「フレイクさん、只今戻りました。」

今までフレイク駆けているのを見たことがあっただろうか、そんなことを考える余裕くらいはあるようだ。心配と安堵を交えた複雑な表情で駆けてきてくれるフレイクの姿に貴未は自然と微笑んだ。

全員の顔を確認していて身体に触れていく、疲れこそは見えるが誰一人として大きな怪我はなくちゃんと自分の足で歩いていることに安堵のため息を漏らすとフレイクは何度も頷いた。

「よく…よく無事に戻られました。」

感極まって思わず涙ぐむフレイクに皆の心は和まされる。おおよそ自分の母親と同じ位の歳であろうフレイクに面影を重ねてしまったのかもしれない。

「俺たちをそこまで思ってくれるのはフレイクさんくらいだよ。」

「何を馬鹿な事を!」

冗談混じりに呟いた言葉をフレイクは諭すように返して微笑んだ。周りは相変わらず忙しく人が行き交っている。

「フレイクさん、陛下はどうされていました?」

「事後処理などされてらしたようですが、今日はお見かけしていないわ。指揮はサルス様がされているし。」

「そっか。皆さん、お疲れさまでした。とりあえず休んで下さい。陛下には私から報告をしておきます。」

とりあえず二人とも無事なのだと分かって自然と笑みがこぼれた。貴未は振り返り共に遠征をした兵士に告げる。

彼らが頷いたのを確認すると貴未はサルスの許へと走った。もう体力なんてないはずなのに、高まる気持ちが身体を軽くさせる。

だいたいの予想はついていたが道行く人に尋ね渡り、視界の先に目的の人物の姿を見つけて貴未は大きく手を振り声を上げた。

「サルス!」

廊下で兵士たちと話をしていたサルスは声の方を向き目を見開く。サルスは兵士との話を終わらせ貴未に近寄ってきた。