魔物たちによる襲撃の被害は城や城周りだけではなかった。遠く離れた村や城からさほど遠くない村にも被害は少なからず出ているのだ。

被害状況を確認するため、もしもの場合は救助にあたる為に襲撃の後すぐに軍隊が派遣された。

しかし城で戦った兵士たちの中ですぐに動ける者は少なく、貴未率いる十数名で遠征に出ることになったのだ。

カルサは今もまだ働き続ける貴未に思いを馳せながら、ようやく時間を見付けて大聖堂に降りることが出来た。

「貴未さん!」

数人の兵士と共に瓦礫の撤去作業をしていた貴未を呼ぶ声がする。駆け寄ってきた声の主に反応して貴未は瓦礫の上から飛び降りた。

「どうしました?」

「この村の住民を全て確認しました。怪我人の処置は終わり、後の作業は瓦礫の撤去だそうです。」

その言葉に貴未は再び視線を作業場の方に戻した。わずかな人数しかいないが、ここも後一日もあれば終わりそうだと目途をつける。

「では、これが終われば城に戻りましょう。私も皆さんも…さすがに働きすぎです。」

苦笑いをしながら貴未はもらした。

あの襲撃から彼らは休息という休息をとってはいない、疲労の色が濃く滲み出ているも必死の状態で作業を続けていた。

助けてと言われたら手を差し伸べてしまう、人の性なのかその繰り返しでここまで来てしまったのだ。だがもう色々と限界だろう。

黙々と作業を終え、村の責任者に挨拶をすると貴未たちは何日かぶりの城への帰還を果たした。

何か状況は変わっているのだろうかと期待したが、城に戻って彼らが見たのは未だ慌ただしい景色だった。城の掃除や瓦礫の撤去作業、怪我人の看病や問い合わせ、要求を出しに城へ上がってくる国民、まだ避難している者で賑わっている。

また外に出なくてはいけない、隊員の誰もが無言で納得した。

自分たちだけじゃない、皆が疲れ張りつめている。もうずっと気力だけで動いていたが客観的に見て一時的でも休息が必要だろうと痛いほど分かった。