大粒の涙が次から次へと溢れてくる。リュナは涙を拭うと怒りを露わにして前を向いた。

もしこの状況がすべて自分のせいで起こったのだとしたら。

「桂。カルサに伝えて、私は私の戦いをするって。」

リュナは改めて桂の方を見て言葉を続ける。

「お城をお願い。」

そしてリュナは再び走り出し、そこには桂だけが取り残されてしまった。

城内にはこれまで感じたこともないほどの重い空気が立ちこめている。

空も低く暗い、雪雲や雨雲とは違う様子に目を細めながらもリュナは再び城の屋根に登り城下や城内の広場の様子を見ていた。

沢山の人や魔物が倒れている。それでも闘う声は枯れる事を知らない。

リュナの髪は闘気に満ちた風に揺らされ落ち着くことはなかった。

「望みは何?」

背中で問いかけた先にはいつのまにか見覚えのある人影がある。

「セリナ。」

嫌というほど聞かされたその言葉をリュナは背中に受けた。

「セリナという子を探している。」

リュナはゆっくり振り返り声の主と向き合う。

その目に映ったのは黒く長い髪を風に揺らせたロワーヌだった。これは少し前に体験した場面と似ている。

やはりセリナとは人の名前であったのだとリュナは静かに理解した。

「貴女がセリナ、私はそう確信しているの。」

リュナの表情は変わらない、それは予期していたことだからなのだろうか少なくとも彼女には覚悟があった。