彼女自身の手でリュナの表情が見えない。

「カルサは本当の事しか言わない。そうなのよね!?」

顔を上げたリュナの目は、まるで助けを求めるようにカルサを見つめている。

「リュナ。」

「セリナはきっと私の事なんでしょ!あの人はそれを求めてる、この襲撃だって私の…っ!!」

「リュナ!!」

リュナの勢いはカルサによって止められた。強く握られた両肩から揺さぶられた身体、大きく開いた瞳を捕らえるのは真っすぐな金色の瞳、カルサはリュナだけを見ていた。

揺れて視界に入った金の石も何かを訴えるように光る。

「まだセリナがリュナと決まった訳じゃない。」

低く落ち着いたカルサの声はリュナの中に深く染み込んだ。それでも信じられない、リュナは首を振りながら目に浮かべた涙を落とす。

「人の名前か、場所か、あるいは力か。もしかしたら称号かもしれない。」

「力…?」

カルサにしては珍しい物言いだとリュナの問いかけにカルサは頷いた。

「俺はセリナを知らない。」

カルサの言葉は彼女にとって意外な事で無意識に疑問符を口にしていた。リュナの手の力を緩めてゆっくりと彼女の身体を開放していく。

「古の民の話も…さっき言われたばかりだ。」

「…誰に?」

「リュナの事はレプリカに聞いてみた方が良さそうだな。」

リュナの問いには答えずにカルサは話を続けた。

そんなカルサの態度に戸惑いながらも軽く頷くことで同意を示す、そしてカルサに促されるように彼が視線を送る先の城内を見下ろした。