「リュナ、質問に答えていない。ロワーヌを知っていたか?」

まだ嗚咽が続くリュナに対してカルサは遠慮なしに低い声を浴びせた。真剣にまっすぐリュナだけを見ていたが彼女の顔はまだ上がってこない。

震える呼吸を繰り返しながら首を横に振って自分の意思を示した。

「…知らない。」

「太古の世界について何か…。」

「知らない!!」

リュナの叫び声がカルサの言葉を遮る。彼女は息を弾ませながら顔を上げ、涙に濡れ悲痛な表情でカルサと向かい合った。

「カルサ、何が言いたいの?」

もどかしい気持ちが切なさに似ている。まっすぐに伝えてほしい、それはリュナの表情に全て表れていた。

「きみは古の民だな?」

いつもより低くゆっくりとした口調は嫌味なくらいに心に染みるように入ってくる。

リュナの中の時が止まった気がした。何の話なのか頭の中で整理するのに時間がかかり反応が鈍くなる。

「私が?」

そう口にした瞬間から鼓動が早くなっていった。あまりの出来事に目が泳ぐ、リュナは明らかに動揺していた。

「私が…古の民?」

カルサは黙って彼女を見ていた。リュナの反応を見ていた。

「だって…私は…。」

否定しようとしているのか、しかしリュナの言葉は歯切れが悪い。いつの間にか止まっている涙に変わり、彼女は考えを助けるように口元に手を添えると沈黙を作り出した。

やがてきつく目を閉じ震える息を吐き出す。

「…自分が分からない。」