それと同じ様に足を進めリュナの前へ盾になるように位置した。ロワーヌは押し負けるように後ろに下がっていく。

「ヴィアル…失敗したか。」

ロワーヌは小さく呟き目を細めた。

千羅の剣は鋭く、いつでもロワーヌを突き刺す準備ができている。明らかに分が悪いと分かっていた。

「どうする、戦うか?」

千羅の低く威圧感のある声は妙に響き殺気さえ感じさせる睨みをさらに鋭くする。しかしロワーヌは冷静に受け流し、視線だけをリュナとカルサに移した。

そして目を細めて決定打を得たのか呟く。やはりと。

「何かが違う。」

二人と千羅を視線だけで何回か見比べ、そしてまた違うと呟いた。

「力の本質が違う。まるで…ウレイそのもの、環明そのもの。」

誰も彼女の言葉に反応を示さなかった。変わらず千羅の剣先はロワーヌを捕らえたまま決して気を抜くことはない。

「貴方たちの本当の名前を教えて?」

ロワーヌが問う。

「千羅。」

カルサの声を合図に千羅は剣を振り上げてロワーヌに斬り付けた。しかしロワーヌは既に後方に下がり風圧を受けただけで傷ひとつ付いてはいない。

ロワーヌは最初でこそ千羅に視線を送ったものの、すぐにリュナの方へと戻して訴えるような表情を浮かべた。

「貴女はこちらに来るべきだわ。」

遠くから差し伸べるロワーヌの手を睨み付けてリュナは無言を貫く。

小さなため息をもらすとロワーヌは静かに手を自分の胸元に引き寄せて三人の顔を見渡した。