ライムもロワーヌも、しきりに本当を知りたがる。今回の舞台裏はなんなのだろうか。

魔物を送り込み、殺戮を行い、求めるものは真実だけだろうか。その真実の価値は何なのだろうか。

それは魔物である自分に関わってくることなのだろうかとお腹の奥から湧き上がる不安に犯されそうになった。

「私の名前はリュナ・ウィルサよ。」

少しずつリュナの中の不安が怒りに変わり膨れ上がってくる。いつもいつも何故人を傷つける事しか行わないのだろうか。

「それ以外にないわ!」

リュナの周りに風が生まれ、目に見えて分かるほど闘志をむき出しにしてリュナはロワーヌを睨み付けた。

これが正解かは分からないがカルサへの救難信号もかねて風魔法の威力を上げていく。

「貴方の手に付いたその血、誰を傷つけたの!?答えて!何の為にこんな…っ!」

感情が昂り自然と声が大きくなる。

いくらロワーヌが穏やかに見せても彼女の手や服に付いた血がそれを否定するのだ。確実に彼女は誰かを傷つけた。

「この世には知ってはいけない事が沢山ある。知らなくていい事も、逆に知っておかなくてはいけない事も。占者なんて名ばかりで、人の過去や未来を覗き見し知ったように口にする。探られたくない過去も全て自分の意のままに覗き深入りしていく。」

ロワーヌが何を言おうとしているかリュナには分かってしまった。分かってしまったが、決定的な言葉を言われるまでは自分を保っている。

止まらない口元の震えも瞼が熱くなってきていることも今は見ないフリをした。

「あの女は過去を覗き今は太古と呼ばれる時代を知った。知らなくてもいい事を知り深追いした。そこまでの力の強さは認めるけど。」

ロワーヌは血で汚れた右腕を見つめる。さっきまでの出来事を思い出しているのだろう、しかし興味なさげに右手を振り払い短く息を吐く。

「目障り。」

リュナは身構える。自らの風を抑えて来るべき時を待った。