微笑みながらライムは正す。馬鹿にされているような気がしてリュナも名乗った。

「リュナ・ウィルサよ。」

リュナの表情は変わる事無く、強い眼差しのままライムに向けられている。ライムは動じることもなくゆっくりとした瞬きで余裕を表した。

「貴方はそう思ってるかもしれないけどね。」

ライムは手摺りからゆっくりと浮き上がり、少し離れた場所でその身を宙に浮かせる。その行動にリュナもレプリカも驚きを隠せなかった。

改めて見ても信じがたい。彼女は水を操って攻撃をしてきた筈だ、風使いでもないのに風を操っている。

「本物かどうかなんて分からないじゃない。風神も、雷神も。」

その瞬間、ライムからの攻撃が再び始まった。

止む事無く降り続く強い攻撃にリュナの結界も渡り廊下も耐え切れなくなってくる。

リュナはレプリカをしっかり支え、自分たちを風で囲むと一気に隣の建物に移動した。

それを見たライムは攻撃をやめ、リュナとライムの睨み合いが続く。

その場にレプリカを寝かすとリュナは立ち上がって結界の外へ出た。

「リュナ様!」

とっさのレプリカの呼び止めに振り返り微笑みを返した後リュナはさらに数歩前に出る。

少しだけライムとの距離が縮まり、二人は互いを視線で捕らえるとまっすぐにぶつかり合った。

「貴方が何を言っているのか分からないけど…この国に危害を加えるのなら容赦はしないわ。」

リュナの右手に風が巻き起こり彼女が生んだ風に長い髪が力強く舞う。

それはレプリカの目を奪ってしまう程、彼女の力はこんなに強かったのかと何度も思ってしまった。

「目的は風神じゃないんだけど…仕方ない。」

そう呟くと不適な笑みを浮かべ、指先で、まるで剣を試し振りするかのように目の前を斜めに切った。その軌跡に水滴が浮かぶ。

やはり彼女は水を操る力を持っているようだ。