リュナに上着を着せながらレプリカはその質問に答える。

その言葉にリュナは反射的に景色が見える所を求めて走り、部屋につながる扉を開けてそのまま窓へ急いだ。

後ろから呼ぶレプリカの声は耳に届いているが状況把握を求めているリュナに答える余裕は無い、窓を開け身を乗り出して外の様子を伺った。

目に映ったのは爆煙が巻き上がり戦場と化している広場、その惨状にリュナは目を大きく開いた。

「血の臭いが風に混ざってる。社。」

リュナは右手を胸元に当て、風の精霊・社の名を呟いた。

その瞬間リュナを中心に風が巻き起こる、その強い風圧に押されよろけそうになるのをレプリカは急いで立て直した。

風の強さは今までとは明らかに違う。

「凄い…。」

レプリカの声が風に消される。自分でも気付かないうちに呟いていた言葉、社の力か、それとも。

「風よ!」

リュナが指差した場所。

一瞬の間を置いて、リュナの風は突如現れ竜巻の様に魔物を囲うとかまいたちのごとく魔物を切り裂いた。

大量に、それはリュナの目に映った広場にいる魔物全てを倒してしまったのだ。

レプリカの目にも信じられない光景として映されている。彼女の力はここまでに強かったのだろうかと何度も問うた。

突然の出来事に戸惑う兵士を他所に手際良く広場への入り口、城門付近に風の壁を作って身体を部屋の方へと戻す。

「あれだけじゃ少しの時間しか稼げないわ。」

視線は未だ広場へ向けたままだったがもう窓に乗り上げようとはしていない。目に映る魔物の亡骸と傷ついた兵士たち、リュナの表情は曇るばかりだった。