「どうした、瑛琳。」

「日向が城門へ向かいました。力はある程度使えるようになりましたが…念の為に補助に回ります。」

「分かった、そうしてくれ。」

日向の行動には正直驚かされたが状況を考えればそう動いてしまうのも無理はないと理解する。

余裕がない自分に焦るが、念の為と瑛琳を日向に付けておいて良かったといつかの自分の判断を褒める気持ちもあった。

小さく息を吐いて気持ちを落ち着かせるカルサに瑛琳はさらに続ける。

「それからですが、貴未が北門で参戦しております。マチェリラは西門、日向は…あの位置ですと東門ですね。」

「そうか。」

瑛琳の報告にカルサは少し安堵の笑みを浮かべた。自分の下に戦力があった事をこんなに感謝したことはない。

「ですから皇子、どうか千羅を傍においてやって下さい。」

カルサが瑛琳を見る。

瑛琳はどこまでも穏やかな表情で笑みを浮かべ、横目でちらりと千羅の顔を見た。

感情が沸き上がった千羅は口元に力を入れても足りない様で拳をあてて目を逸らす、目元が潤み涙も堪えているのだと分かって瑛琳は目尻を下げた。

「私も涙を飲んで傍を離れております。皇子、私たちの存在の意味は貴方様をお守りする事。どうぞ気持ちを汲んで下さいませ。」

そう続けて頭を下げる瑛琳をカルサは黙って見つめる。

同じ様に千羅も勢い良く頭を下げカルサの判断を願い出た。

何も頭を下げることはないのに。ただ自分が太古の国の皇子というだけで、彼らが古の力を受け継いだという縁だけで時間を共にしているだけにすぎないのに。

こんなにも強く自分の生を願い祈り続けている、守ろうと戦い続けてくれている。

この気持ちをどう言おうか分からずカルサは居た堪れなくなった。