向かう先は城門、しかしそこはもはや戦場となっている。

駆けて駆けて辿り着いた城門ではあまり見ることない相手に兵士たちは完全に戸惑っていた。

勇敢に戦おうとするも魔物が一歩ずつ近付く度に恐怖心は増していく。

戦意を失いつつある兵士たちにとっては戦場というより魔物による殺戮だった。

なすがままに傷つけられていく兵士たち、闘志は完全に失われている。

また一人、確実に魔物の手によって命が奪われそうになった瞬間、聞いたことのない精神的にえぐられるような悲鳴が辺りに響いた。

その声だけで腰が抜けそうになるほど身体の芯まで響く衝撃に耐え抜いた兵士たち、その目に映るのは地面に倒れ既に事切れた魔物の残骸だ。

「貴未さん！」

兵士の誰かが叫ぶ、魔物を倒したのは貴未だった。

彼の手には不似合いな大きな剣はいつも貴未が出動の際に愛用している物とは異なり重量感がある。

手にするだけで疲れそうなものだが貴未は使いこなしていた。

その姿を見るだけでも異常事態だと思わされ言い様のない脱力感に襲われる。

そんな兵士たちの気配に気付いてか目の前の魔物から決して意識を外さないまま、貴未は背中で彼らに怒鳴りつけた。

「何やってんだ！！しっかりしろ！！」

次々に襲い掛かってくる魔物を確実に切り倒していく。

誰が見ても明らかなほど貴未は戦い慣れしていた。その姿に思わず見惚れる者もいるほど見事なものだったのだ。

「見えているものは何だ！ここは戦場だぞ！！」

貴未の大きな叫びにようやく兵士たちの心は動いた。

力なく下りていた手が動き出し剣や弓など様々な武器を持ち立ち向かう姿勢を取る。

本当の意味での戦争がいま始まったのだ。