その表情は神妙なものだ。

「あのさ、祷。」

はい、祷がそう答えようとした瞬間だった。

地面が揺れる程のとてつもなく大きな爆発音が城内に響き渡り、その音の衝撃と地響きに言葉を失う。

やがて誰かの悲鳴をきっかけに人々は大きく乱れ騒ぎ始めた。

その声はかすかに日向のいる場所にまで届いた。

「何?何が起こったの?」

「魔物ですわ。城門を突破されたようです。」

遠くを伺うように祷は目を細めて宙を見ている。

「魔物?確か今、王様も貴未もいないよね!?どうしよう!」

「いえ、二人とも戻られているようです。少し前ですが桂の力が使われました。」

会話の時だけ視線を日向に送り、それ以外の時は宙を見て様子を伺っていた。

気配を探っているのだろうか、そんな祷を見て日向は決意する。

「祷、これはどういう状況?」

決意故の発言だった。

「魔物の群れの、襲撃ですわ。」

「もう時は迫ってきてるってこと?じゃあ…僕に出来ること、あるよね?この力で。」

「約束して下さい。決して無茶な真似はしないと。」

まだ完璧ではない力では身を滅ぼしかねない、祷の思いを汲み取ると日向は微笑んで立ち上がる。

祷が小動物の姿になり日向の肩に乗ったことをきっかけに日向の足は駆け出していた。