「分かりました。」

低い声が靴音よりも響いた。

「決して離れません。」

強い言葉で響かせる、千羅の言葉は誓いだった。

もう二度と同じ失敗はしない、もう二度と同じ思いはしたくない、カルサを守るためにも自分の為にもあの時そう強く願い誓った。

「そうか。」

そう応えたカルサは安心を得られた、そんな気持ちの表れだったのか穏やかな声を放つ。

「瑛琳をリュナの方に戻しますか?」

「いや、あっちの方が気になる。リュナは何が何でも見つけ出す。約束をしたんだ、守ると。」

だからついて来いと昨日約束したばかりだった。

たとえ今、目の前に居なくても鮮明に映るリュナの姿は不安が混じりながらも喜んでいたように思う。

それは彼女に伝えたい言葉なのか自分に誓うための言葉なのかは曖昧なところだ。

「絶対に危険な目に合わせない。もし危険な目にあっても必ず見付けだして守ると決めたんだ。」

確かな足取り、彼の意志は強く彼自身を支えていた。

その思いの繋がる先を彼は気付いているのだろうかと千羅は確かめたくなる。

しかしそれは野暮に過ぎないと思い口角を上げた。

「でしたら、もしもを考えず生きぬかねば。生きていなければリュナはもちろん何一つ守れません。」

カルサは自分の言葉の深さを気付いていないのか千羅によって知らされた意味にはにかむように笑う。

「そうだな。」

何かを守るためには自分の命は必要不可欠、リュナを守り続けることは己の命も守り続けることになる。

巡り巡って今のカルサを生かし動かしているのはリュナの存在だった。

同じ様に今のリュナを生かし動かしているのはカルサの存在なのだと千羅は信じていたいのだ。

「私も信じます。彼女…リュナ・ウィルサを。」

「ああ。」

幕の向こうは白でも黒でも彼女の瞳を信じていようと心に決めた。