「リュナ、入るぞ!」

カルサは扉を開けて彼女がいる筈の寝室へと真っ先に足を向けた。

勢い良く扉を開けるてみても、そこには誰の姿もない。

「いない?」

口にした通り辺りを見回しても人の気配すらなく、誰もいなかった。

「皇子。」

判断を求める声が千羅から投げ掛けられる。

瑛琳やマチェリラの話では今朝から調子を崩しているリュナは寝室で横になっているということだったが、この騒ぎに気が付いて動き出したのだろうか。

リュナの性格を考えると居ても立ってもいられずに対策を打ちに出た筈だ。

気になるところも多くあるが信じる道を選んだばかりのカルサにはそう考えるのが当たり前になっていた。

「城内のどこかにいる、探すぞ。」

そう言うと二人は足早にリュナの部屋から去っていく。

まだ近くにいる筈だろう、早足のつもりがいつしか気持ちと等しく駆け出していた。

嫌悪感を覚え自然と手がこめかみに行き目を細める、気付きたくは無かったがまるで以前の様にカルサの頭の中で警戒音が鳴り響いていた。

確実に不穏な空気が城の中に流れて嫌な予感がして仕方がないのだ。

「千羅。」

「はい。」

「頭の中で警戒音がなっている。」

本来なら足が止まりそうな話だがそうもいかない二人は足は進めながら会話を続けた。

カルサの言葉の意味を千羅は深く理解している。その恐怖も誰より強く分かっている。