「俺は城の守りを。」

「私も。」

貴未とマチェリラの言葉にカルサは頷いた。

この貴重な戦力は素直に有難い、その意味を込めて感謝を表した。

「頼りにしている。すまない。」

「こういう時は、ありがとって言うもんだ。」

「そうだな。ありがとう。」

くすぐったそうに笑う貴未とカルサを他所にマチェリラは一人呆れるような表情で呟いた。

「気持ち悪い。」

誰に聞かせる訳でも無く呟いた言葉はしっかりと聞こえたようだ。

彼女らしさを発揮させた発言に苦笑いすると貴未はマチェリラを連れて姿を消した。

「大聖堂にはラファルがいる。もしもの時は、貴未にラファルの気配を辿るように伝えてくれ。」

重いカルサからの願い、千羅はそれに答えたくはなかった。しかし状況を考えるとそうもいかない。

「機会があれば、ですね。」

それが千羅なりの精一杯の抵抗だった。

「そうか。」

千羅の気持ちを察してカルサは微笑む、やがて足は動き始め駆け出していた。

気持ちも身体も、確実にリュナの許へと近付いている。

何重にも合わさった幕の向こうで彼女が身にまとっているのは白か、それとも黒か。

どちらを願うことも出来ずにカルサは走り続けるしかなかった。