「ナルのとこ…な。」

このところナルの身の回りの警護を任されている紅の姿を見ていない。

貴未も調査に出るといなくなっていた、この前の貴未の言葉を思い出すがなんとも言えない疎外感を覚えずにはいられないのだ。

そして紅が居ないことへの不安も伴って胸中は穏やかじゃない。

「特殊部隊や結界はどうだ?」

沈黙を破ったのはサルス、これからのことを考える上で必要な情報だった。

近い内に状況を確認しなくてはと思っていたところだ聞きに行く手間が省けて助かったと思いながら聖の答えを待つ。

「特殊部隊は確実に戦力を上げとる。結界も補強しとるし問題はない思うけど…。」

それは間違いではない、しかし妙な間を持ってしまった自分に変な違和感を覚えた。

おそらくそれは真実だからだろう。

「相手による。」

聖の眼差しは真剣だった。

言い様のない不安が生まれてサルスは目を細め息を飲む。

「あん時みたいに、めっちゃ強い奴が来よったらひとたまりもない。」

あの時。その一言でそれが何を指しているのかが分かってしまった。いや、分からずにはいられないと言った方が正しいのかもしれない。

カルサとリュナが封印された、あの時の侵入者。

誰も適うものがいなかった、それほどに強い者がいたら結界など意味をなさないと聖はそれを訴えているのだ。