「それでは、その様に。」

「ああ、頼む。」

沢山の人が集まる大部屋の一角、数段上った中二階の様な場所にサルスはいた。

片手には数冊の書類の束を持ち新たな対象を求めて視線を彷徨わせる。

上手く相手がサルスの方を向いていたおかげですぐに探し求めることが出来たようだ。

目当ての人物を見付けると微かに笑みを浮かべてサルスは足を向ける。

自分がその対象だと気付いた相手は慌ててその場から駆け寄った。

「すまない、走らせるつもりは無かったのだが。」

「いえ。ご足労かけてしまい申し訳ありません。」

「ここに来た方が早く済む。便利で助かってるよ。」

恐縮になる臣下の姿に物腰柔らかな態度で答えると、サルスはさっそく本題に入った。

既にやり取りのあった内容は簡単な言葉だけでお互いに理解が出来ていく。

まだ朝も早い時間から居たせいか、少しずつ増える人の気配に一般的な開始時刻を感じた。

そして自分に向けられる強い視線に気付き視界の端でその持ち主を確認する。

知った顔だった。

「あとは任せた。」

「はい。」

無事に話がまとまり互いに笑みを浮かべてサルスはその場をあとにする。

中二階に上がった辺りに立つ人影はその間もサルスから目を離さなかった。