「どうした。泣いたと思ったのか?」

「…いえ。」

それでも目元から手を離さないリュナにカルサは表情で何かと問いかける。

「その時…出来なかったことをしたくて…。」

カルサの目が大きく開かれた。

目の前にいるリュナは切ない表情を浮かべ今とその時のカルサを抱きしめるように傍にいる。

「確かに。あの時は泣いたな。」

周りにジンロが居ても、千羅が傍に居てもとても抑えきれなくて涙を流した。

無力感と言えばいいのか悔しさと言えばいいのか、とにかく強い憤りと無念さが交じりあって吐き出すことしか出来なかった。

これは一人分の涙ではない、そう思いながらカルサは吐き出せる限りの感情を可能な限り吐き出したのだ。

「…ここまで…貴方は縛られていたのですか。」

リュナの言葉には苦笑いをするしか出来なかった。

「俺こそ一刻も早くこの国から出ていかなければいけない人間だ。」

その言葉にリュナの口元に力が入る。

絶望のその先にある確かな居場所が見えた気がした、いや、見つけたと言った方が正しい。

カルサはずっとその場所にいたのだ。

不謹慎にもようやく同じ場所に立てたような気がしてリュナは微かな安堵を覚えた、そして当たり前のように覚悟も決まった。

次の手を考えることが自分の生きる道だと強く思ったのだ。

「リュナが今までこの国で暮らせていたのは人間の血の方が勝っていたからだろう。だが今は…おそらくあの封印の影響で魔性の血が勝ってしまった。きっとリュナは混血なんだと思う。」

「…混血。」