「…道は作る。」

やっと聞こえてきたカルサの声にリュナは僅かに顔を上げた。

「リュナの道は。…俺たちの道は必ず俺が作る。」

リュナのふさぎ込んだ狭い視界にカルサの身体が入ってくる、それはカルサが身を屈めてくれていることだとすぐに悟った。

導かれるように顔を上げたその先にカルサが手を差し伸べて待っていた。

「事実は変えられない。嫌でも受け入れるしかないんだ。」

カルサの表情は薄暗くても夜目の効くリュナにはよく見て取れた。

「リュナが魔物でも。…俺がウレイでも。」

力のこもったその言葉にリュナの目が大きく開く。

「…何を。」

「言っているのか、か?こんな状況で冗談など言うつもりはない。」

「でも貴方はカルサトルナス皇子では…?」

「ああ。」

状況が掴めずリュナは困惑した表情で首を傾げた。

「俺の身体は太古の国で捨ててきた。そして新しく得たこの身体はウレイの身体だ。…生まれ変わったウレイの身体を俺が奪ったんだ。」

今すぐにでも掴まないと消えてしまいそうでリュナは慌ててカルサの手を取った。

カルサの言葉の意味を理解していなくても身体が勝手に彼を離すまいと動いたのだ。

「まだ産まれる前、母上のお腹の中にいた子供の中に俺は引き寄せられるように入った。それは…ウレイの生まれ変わりである人間だった。俺は彼に融合するような形で…それだと聞こえがいいな。」

自嘲するように言葉を吐き出す姿はとても儚い。