「カルサ?」

一つ消えたことにより訓練場の明るさが少し失われる。

カルサは何も言わず一つまた一つと順に火を消していき、その様子をリュナは見守るしか出来なかった。

最後の一つを目の前にして立ち止まり、ようやくカルサはリュナの方を向いたのだ。

不安げに揺れるリュナの瞳はやはり怪しげな光を帯びていた。

「…お前のその目、今どう見えているか分かるか?」

カルサの言葉にリュナの口元が震えて固く結ばれる。

それは分かっていると言っているようなもので言葉にならない分カルサに強く伝わってきた。

「この前…レテイシアの話が途中になっていたが、魔界と呼ばれるレテイシアにも特別な役割があった。」

「…特別な役割。」

掠れた声は彼女の緊張を表しているのだろうか。

リュナの復唱に頷くとカルサは言葉を続ける。

「オフカルスは光ある世界の中心を担う源の世界、レテイシアはそれに対する世界だ。レテイシアは闇、全世界に夜をもたらす闇の全てを請け負ったもう一つの中心世界だ。」

全ての世界に隣り合うどこにも属さない、そしてどこにも属している不思議で奇妙な世界は中心世界とまったく同じものだった。

「そして、魔物たちが住む世界でもある。」

その言葉にリュナは無意識に息を飲んだ。

それをどうしていま話すのだろう、リュナは言い様のない不安に襲われて胸元を強く握りしめた。