「…完敗です。」

「力を使えばもう少し結果も変わっただろう。…予想以上の動きに驚かされたな。なかなかの腕前だ、リュナ。」

刀を下ろしてリュナに手を差し出す。

褒められたことによりリュナの表情は幸せそうに崩れ、照れくさそうな笑みを浮かべながらカルサの手を取った。

「悪かったな、疲れているところに付き合わせて。」

「いいえ。嬉しい申し出です。」

「それは舞踏にでも誘われた時に使う言葉だろう。」

リュナの刀を受け取りながらカルサが声を出して笑う、そんな姿を見たのは久しぶりでリュナも嬉しそうに笑った。

しかし僅かにしびれが残る手の感覚にカルサとの力の差を感じて少し気持ちがざわめく。

「陛下…。」

言葉を遮るようにカルサの手が目の前に突き出される。

小さく彼が首を横に振ったのを確認するとリュナは改めて口を開いた。

その意図することに気が付いたのだ。

「カルサはどうかした?こんな時間にここに来るなんて剣でも振りに来たの?」

「いや。」

そう言って訓練刀を元の場所に戻すとカルサはリュナの方に向き合ってまっすぐ彼女の目を捉えた。

「リュナを探していた。」

「…私?」

リュナの言葉に頷くとカルサは二人の間の距離を縮めるように歩く。