最後の言葉は色が違うことを察して聖は息を飲んだ。

聖が来た時には既に貴未はカルサの仕事を請け負うまでにシードゥルサに入り込んでいた。

そして今までずっと帰りたくても帰れない故郷に思いを馳せながら仕事をしていたのも知っている。

あれから何年かなんて数えてはいないがそう短くはない時間が経っていたのだ。

「今回…その友人に会いにリンの国に行ったんだ。でも居る筈の場所に行くと彼女はもういなくて…名の知れた人だったからそこに住んでいる人に聞いたら言われたんだよ。彼女が死んでから二百年経ってますって。」

「二百年。」

改めて出された数字に聖の感情が押しつぶされていく。

二百年、歴史の本を読み返せば紙をめくるだけで過ぎる時間だが今はその感覚ではなかった。

他人行儀な触れあいから自分の身に降りかかってきた二百年は何とも表現し辛いほど虚無感に苛まれたのだ。

貴未はこれを乗り越えたのだろうか、それが真実だと受け止めなければいけないのは分かっていても少し時間がかかりそうだった。

ともあれ張りつめていたものが少し緩んでいくのが分かる。

日向と自分たちは同じ時代を過ごしていた訳ではないのだと、そう思っただけで肩の力が抜けた気がした。