覚悟を決めたのだろう、そして困ったような顔をするとため息をひとつこぼして口を開いた。

「聖は隠し事が多すぎる。」

その言葉は穏やかで、その場にポツンと置いたような力のない大きさだったが聖の胸に強い衝撃を与えた。

攻撃をするだけの聖の態度が一瞬にしてなくなり無防備なほど全身の力が抜けている。

予想外だったのだろうか、そんなことを思いながら貴未は言葉を続けた。

「俺知ってるよ。本当の名前じゃないことも、ここから帰らない理由も。…紅が教えてくれた。」

「…紅が?」

聖の声に貴未が頷く。

「少しだけどね。本当は黒大寺じゃないとか…国から逃げてきたとか。」

聖が動揺しているのが分かった。

拳を握っていた手は力が入らなくなり震えながらも拳を握ろうと懸命に小刻みに動く、聖の口も目も開いたまま何かを求めるように動いていた。

ただ信じられないという気持ちで立ち尽くす彼の心の中は紅への疑問でいっぱいなのだろう。

しかしすぐ尋ねようにも彼女はここにはいない、貴未はゆっくりとした口調で言葉を続けた。