「おー、見事な雪景色だな。」

手を伸ばして雪に触れようとする貴未の後ろをゆっくりと聖が付いてくる。

まだ屋根がある掃き出し窓の傍で立っているだけでも訓練場の中の声は少し距離を持って聞こえてくるようだ。

敷居を跨げばそれはもっと遠くなるだろう、それは正解だった。

貴未は敷居を越えた庭側に立ち、背後の喧騒よりも目の前の静寂を選ぶ。

「神妙な面持ちで…何か聞きにくいことでもあんの?」

なんとかこの冴えない場の空気を改善しようと困ったように微笑んでみたが貴未の願いは叶わなかったらしい。

背後に立つ聖の表情は前よりも厳しいものとなり、そして自分の思いを遂行しようとしていた。

「自分…故郷に帰ったんやろ?」

「…帰った。」

貴未は無駄な努力と諦め聖と向かい合った。

「なんでそのまま留まらんかったんや。」

「やりたいことがあるから。」

「ここでか?」

「そう。」