思えばカルサはリュナが城に来る前ことをよく知らない。

どんな風に暮らしていたのかも聞いたことがない。

あるのは小さい頃、あの場所に訪れたときに出会い言葉を交わした記憶だけだった。

「俺は…何も知らないのか…。」

自分のことばかりで彼女を知ろうとしていない、今まで自分のしてきた事に呆然とする。

確かに忙しかった。

国務もあれば幾度となくくる太古の因縁がらみの侵入者、自身の戦い、しかし言い訳はどこまでいっても言い訳のまま。

カルサが彼女の事を深く知ろうとしなかったのは変えられない事実だ。

聞いて彼女が話さなかった訳ではない、聞かなかったのはカルサだった。

「…どちらにせよ、主は衰弱している。光の力を持つ者よ、力を貸してほしい。」

「力?」

「雷神…光の精霊を連れてはいないのか?」

社の言葉にカルサは黙ってしまった。

短いため息のあとの静かな微笑みはいつものように切ない表情だ。