妖しげに笑みを浮かべるリュナに少しばかりの恐怖を感じながらタルッシュは彼女の剣を跳ね返した。

「はあっ…はあっ…。」

肩で息をするのも苦しいほどだ。

とっさの判断が効いたとはいえ、もし剣を構えるのが遅れていたらどうなったのだろうかと不安が過る。

さっきの彼女なら容赦なく斬りつけてきそうだと背中に冷たい汗が流れるのを感じた。

まさかそんなことは無いだろうが、恐怖を感じたのも事実だ。

肩を大きく揺らして呼吸をするタルッシュに対してリュナは平然と剣を構え直す、彼女もまた力を放出したままなのだ。

そして呼吸は少しも乱れていない。

リュナが近付いてくるということは風神の風も近付いてくるということだ、強い風圧は容赦なくタルッシュの体力を奪っていった。

以前討伐で出動した際に見たことあるが、リュナの風魔法は魔物を容赦なく斬り刻んでいたのを思い出す。

一瞬、自分がそうなるのではないかと生きた心地がしなかった。

「…選んでいただけて光栄ですよ。」

精一杯の強がりでまた剣を構え直すが、対峙するリュナは余裕の笑みを浮かべさらに風の力を周囲に巻き起こした。