素直に嬉しいのだろう、長年故郷へ帰ることが出来なかった貴未のことを思うと笑みが止まらなかった。

しかしカルサの表情はそうではない、彼が伝えたいのはその先の言葉だったのだ。

「特別な空間はそれだけではない。」

カルサの言葉に我に返りリュナは気を引き締め直した。

そうだった、まだ話の途中だったと言葉を遮った自分に反省しながら聞く態勢をとる。

「オフカルスは世界の中心、界の扉の間、そこを管理する管理室、世界を監視するカリオ、そしてレテイシア。」

「レテイシア…？」

初めて聞かされる名前にリュナはゆっくりと繰り返しながらも疑問符を浮かべた。

特別な世界と称されるその場所は聞き慣れない名前、そしてカルサから初めて聞かされる名前だ。

「魔界とも呼ばれている。訪れたことはないが、聞いた話によれば闇の支配する世界で僅かな光しか存在しないようだ。それ故に空気も冷たく雪の季節のような空気に似ているらしい。」

その時リュナが予言したとおり空から雪が降り始めた。

いつの間にか雲に覆われた薄暗い景色の中、白い雪がしんしんと舞い降りて景色をさらに白く埋めていく。