「なんだ…あれは。」

まだ微弱だったのか、半透明の黒い手は余韻を残さず消えてしまった。

あれは空間を裂いて現れた手、二人の頭の中にその言葉が過る。

「まさかヴィアルアイが?そんな力は無い筈…。」

「永の力だ…。」

カルサを遮ったその言葉に息を飲んだ。

有り得ない話ではない、むしろそう考えるほうが自然だった。

さっきまでとは一変して不安と恐怖が交錯し頭の中を支配する。

時間は待ってくれない、一刻も早く動かなければいけないのだ。

この手を繋いだままで良かった、もしあと少し反応が遅れていたらと思うと手が震える。

カルサは決心した。

「千羅、マチェリラ!いるんだろう?」

カルサが叫んだ瞬間、彼らは姿を現した。

おそらく二人一緒にいたのだろう、見事にタイミングは同じだったのだ。

「貴未。」

マチェリラは直ぐさま貴未に駆け寄り、千羅もカルサに近付いた。