目の端に映る貴未はまっすぐにこちらを見ている。

「私は貴方のことが大好きですよ。」

会う度に言われてきたリュナの言葉を思い出して目頭が熱くなった。

こんな自分にこんな優しいものを与えてくれる人がいるなんて、それを思うだけで泣きそうになるのだ。

「ほれ。カルサも好きって言ってみ？」

照れ隠しか貴未が茶化すがカルサは吹きだして無理だと伝えた。

互いにくすぐったい気持ちが現れて、まるで子供の頃の様に繋がれたままの手を揺らす。

お互いに目を合わせ確かな関係を感じていた瞬間、カルサの表情が一変した。

「貴未！！」

貴未の背後から黒く大きな手が貴未を捕えようと現れた。

その邪悪な気配に気付き、貴未も目の端で確認した瞬間には既に身体が引っ張られていた。

それは手の方ではなく反対の方向、固く握っていた貴未の手をカルサが自分の方へと引き寄せたのだ。

体勢を整え急いで背後を確認すると黒い手は空振り、ゆっくりと消えていった。

ゆっくりと穏やかな動きは強く大きな力を感じさせる。