「ここでいいの？」

海に面した岩場にある小さな洞窟、奥へ奥へと進んだ先に道中の険しさから誰も踏み入れたことのない湖があった。

透明度の高い清らかな水と僅かな隙間から指す光は暖かく、そこが特別な場所であると訴えているようだ。

まるで人が踏み入れることをその清らかさをもって拒絶しているようにも感じる。

この地に降り立った後の貴未の言葉に頷くとマチェリラは湖の畔へと足を運んだ。

目下にあったのは白く大きな竜の身体。

久々に見る自分の身体に目を細め、意を決したように貴未を見つめた。

「貴未、見て。」

貴未を近くに呼び寄せマチェリラは湖の中を指差し彼の視線を誘導する。

「うわ…竜？」

白く大きな竜は生きているか分からない位に静かに丸まって水の中にいる。

襲われたら一口で食べられそうだと身震いしながら暫く眺めた後、貴未は何かを思い出して表情を変えた。

「俺さ、小さい頃に竜を見たことあるんだ。」

貴未の言葉にすぐに反応してマチェリラは彼を見つめた。