五大皇力も揃ってもうここに留まる理由はなくなった、国を整えて出た方が自分にも国の為にもなるのだ。

例え逃げるのかと言われても正々堂々縦に頷く覚悟は出来ている。

「行かないと…早く総本山に行かないと。」

もう時間はない、小さくなるカルサの姿を千羅は見ていた。

こちらの動きは少なからず把握されている筈だ、カルサが目覚めて何も動きがないのは不気味を超えて恐怖に変わる。

一秒でも早く手を打たなくては何が起こるか分からないのだ。

不安に駆られ懸命に走り続けるカルサを千羅はずっと見てきた。

立ち向かう姿勢を感じられたが今は違う、まるで早く終わらせて貴未から逃げようとしているようだ。

千羅はカルサの目の前に立ち彼の両肩を掴んで自分の方を向かせた。

「逃げるな。」

千羅の声にカルサは悲痛の表情を浮かべる。

何故こんな事になるのか、どうして自分なのだという複雑な感情がカルサの中で膨れ上がっていた。

何の為に今まで距離を保ってきたと思っているのだと、行く宛のない怒りが処理しきずに千羅の腕を掴んで頭を預けた。