千羅が張った結界の気配に気付いたカルサは、貴未の傍に千羅が付いてくれていることも同時に気付いていた。

いつもよりも早く終わらせた会議の後、会議室にはカルサ一人が残っている。

すぐに戻ると貴未に告げたにも関わらず、黙ったまま自分の手元を見つめて考え込んでいた。

何を考えても仕方がない。

カルサのため息がむなしく部屋に響いた。

「俺に何か用か？」

頭を動かさずにカルサは呟く。

視界の端には淡い光が物言いたげにカルサの横でその存在を示していた。

カルサは顔を上げ光の方を見つめて訝しげにまた口を開く。

「誰だ？」

目を凝らしても光は光のまま、敵ではないことは分かるが正体が分からなかった。

やがて光は形をとり、マチェリラが自らの姿を現してカルサと向かい合う。

それでも分からないのか、カルサは目を細めて目の前に立つ女性の正体を探った。

「私が分からない？カルサトルナス。」

その声その言葉を聞いてカルサは表情を変える。

瞬間に思い出したのだろう、半信半疑の思いから小さな声で名前を呟いた。